Sep 23, 2011

bonheur


眠れない夜なんてほとんどないんだけど、
それでも珍しく眠れない夜、お気に入りの画集を開く。
最近は文字ばかり追いかけていたから、
目に飛び込んでくる線や色が眩しくて、優しい。

朝、もう一度画集を開く。
まだ仄暗い光の中で見るそれは、
彩度も明度も一段と低くて、
南桂子という銅版画の作家にぴったりの光に思える。

ちょうどこの本が刊行された頃、
私はパリの美術館をせっせと巡っていて、
美術書を置く本屋には、奈良美智や村上隆と並んで平積みにされていた。

詩集のような本。
実際、一編収録されている谷川俊太郎「銅のフェティシズム」も素晴らしくて、
見終わる頃には、小ぶりで美しい短編集を読み終えたような気持ちがしてくるのだ。

Sep 22, 2011

猪の桃太郎



山梨の山奥で聞いた、猪の桃太郎の話。

みいちゃんがおっぱいを飲んでいた時に、

(おっぱいを飲んでいた年齢なのか、
 まさに飲んでいたその時なのかは分からない。)

猪の子供がやってきて、
お隣に住む仙人さんがとっつかまえた。

猪は桃太郎と名付けられ、
小さな檻の中ですくすく育った。

葉っぱをやるとはむはむと食べるが、
「小さな子供は気をつけて。手がもげるから。」
とみいちゃんは言う。
「でも優しい子だよ。」
と、みいちゃんは付け加えた。

桃太郎は触ると箒みたいに固かった。

Sep 8, 2011

怪獣




娘は怪獣。

ちいさくて柔らかい手は、
意外な力で引っぱる、叩く、握る、ぎゅっと私にしがみつく。

ちいさくて柔らかいお腹から、
発せられる声、雄叫び、きゃっきゃっと笑い声、耳をつんざく泣き声。

不思議なことば。
ぺにょーん、にゃきーん、んまんま、にゃいにゃい、
ぶーぶー、だーだー、あんね、こんね、くぁあいいね。